~イベント記録ページ~
ただよう墨絵師として、作品を生み続けている江島恵さん。
その作品から溢れるストーリー性や情感の奥深さは筆舌に尽くし難い世界を持っています。
出来上がった作品を通して、その世界を垣間見ることができるのはもちろんなのですが、江島さんの表現者としての魅力は、その作品を描く瞬間の姿も、空間もアートになっているということだと思います。
そんな研ぎ澄まされた空気の中で、鳥肌の立つような感覚を体感できるのが、「江島恵 墨絵ライブペインティング」です。
音楽に合わせて、その曲が始まって終わるまでの間に、一つの作品を仕上げるという、まさにその瞬間に生きるアートと呼ぶにふさわしい世界。過去3回ほど体験させてもらい、毎回心地よい緊張と感動を得ていましたが、その音楽の選定を全曲任されるという大役を、今回仰せつかりました。過去3回はROSSAの田中さんという幅広い音楽に対する造詣と類い稀なセンスを持ち合わせたこれ以上ないくらいな適任者が選曲されていたので、相乗効果がありましたが、自分にこの大役が務まるか、生半可なことはできないなと、お話をいただいてからも、組み立てては壊しを繰り返すだけで、僭越という表現しかできない精神状態が続きましたが、私自身、影響を与えてくれた音楽達と再度真剣に向き合う機会を得ることができました。そして迎えたライブペインティングの日、江島さんは見事に予想をさらに上回る素晴らしいアートステージを展開してくれました。
江島恵さんの墨絵ライ ブペインティング、珠玉の息吹あふれる曲の数々とのコラボで、生まれた作品の記録として、ぜひ感動を共有していただきたく、僭越の上塗りですが、まとめサイトをここに用意いたしました。
同席された方も、ご覧になれなかった方も、ぜひご堪能ください。
Gypsy Pot :Jun S.
第1部
曲名:Live and let die/Wings
1973年映画『007 死ぬのは奴らだ』の主題歌で、私が初めて自分で買ったレコードの曲です。歌っているのはポール・マッカートニー。歌い上げるバラード部とスパイアクションを連想させる激しい間奏部分のメリハリがライブペインティングに合う予感がして選びました。
筆の運びが音楽の躍動にリンクするように進み、力強い屈強な姿が描かれていきました。足の速い神として知られる韋駄天の雄姿です。
曲名:Ceddin Deden
1979年のNHKドラマ「阿修羅のごとく」に使われ、
現れてきたのは、食べ物として好物の蛇を見つけ、得意げに狂喜乱舞する男の業が感じられます。
曲名: I Am The Walrus/Beatles
一番影響を受けたアーチスト「ビートルズ」
そこで江島さんが描きだした世界は、なんとも楽しげでありがたい迎え入れてくれる優しい世界でした。
※この曲は権利関係が特に厳しく、音声をオンにした状態で公開することができません。苦肉の策で、音のないライブペインティングの映像と、原曲の動画を2本同時に再生させて、雰囲気だけでも味わっていただこうと、別サイトに2本同時再生ページを用意しました。
曲名:Mother/John Lennon
この曲はJohnの曲の中でも特に衝撃をうけた曲。人間の根源的孤独を表現せざるを得なかった、
そして描かれた作品は、太い線で重く構成されていき、やがて明らかになった悲痛なまでの固い怒りの表情をもつマリアと、理不尽な扱いを引き受けたキリストの姿。
ここまで刺さる墨絵を表現いただけるとは。
曲名:Smoky/Char
とにかくかっこいい、ギター少年にはたまらない、技のデパートのような構成でありながら、
江島さんの筆の動きや技の数々も、スリリングでスタイリッシュな雰囲気を醸し出し、描かれていくのは躍動感みなぎる、ダイナミックな伝説の世界。
第2部
曲名:遠来/友部正人
この曲をはじめて聞いたとき、このうたが意図する共時性、
そして、描かれていく墨絵は、歌の流れに従って次第に安心感が増幅していくような、おだやかで癒される世界でした。
曲名:Er Turan/Turan Ensemble
この曲を演奏しているのは独自性にあふれ、音を妖術のように使いこなす印象を持つカザフスタンのワールドミュージックグループ。
その音にインスパイアされて江島さんが描きだした世界は、妖艶な女性の姿。そしてその横に徐々に表れてくる強面な男。旧約聖書に描かれた逸話になぞらえた見事な作品となりました。
曲名:Beautiful Morning/East
この曲を演奏しているイーストは、私が中学時代深夜ラジオ放送を聞きながら、そのギター奏法で大変感銘を受けた瀬戸龍介さんが、そのもっと前の1972年にアメリカでデビューした日本のバンドで、当時大きな話題となり、日本に逆輸入されました。モダンフォークと和楽器が融合したような不思議な響きと世界観が、混じり切らない東洋と西洋を感じさせるような曲です。この伝説の曲で江島さんが描きだした作品は、長い黒髪が切なく、いとおしく感じさせるような雰囲気の女性の姿。タイトルもまた、古来からの男女のドラマを感じさせる作品です。
曲名:Rustem si suite/Taraf De Haidouks
このスピード感と存在感のある独特のフレーズ、強烈な印象を残す音色。私がジプシー音楽にはまる事を決定づけたユニットと曲で、あらゆる要素が詰まった演奏です。
曲名:Rainbow Connection/Kermit the Frog
この曲を歌っているのは、ジム・ヘンソンが製作したマペット、
アンコール
曲名:ただよう墨絵師/Jun S.
今回選曲をしながら、自分だったら墨絵というイメージでどんな曲を書くだろうとたびたびイメージすることがありました。最後にアンコールがくるかもしれないので、なにかGypsyPotの曲でも用意しておこうかという話になった時、いやきっとそれは今まである曲ではないなと思い、無謀にもオリジナルをそこで生演奏してみたいという気になりました。完全に事前に用意していましたということになってしまうのですが、サプライズとしても面白いかもしれないと思い、日本で発明された楽器である「大正琴」を選びました。
この曲は、ただよう墨絵師というイメージの曲。
そして、江島さんによって描かれた作品「墨の精」は、江島さんのなかのもうひとつの姿のように映りました。